句集「山天」二十九号によせて
 句集「山天」編集に当たっては、主に、県視障協通信句会に於いて、城取信平先生に御選をしていただいた作品と、作者自身が、その句に寄せる思いが深く、是非二十九号へまとめておきたいという作品とを、一人十句づつ選んで編集しました。通信句会に於いて、城取先生の御講評はクラブ員の大きな励みとなっていることに、心から感謝申し上げます。
 改築されて三年目となり住み心地の良い施設で、小鳥の声を間近かに、山からの風に親しむ生活のなかで、毎月一回俳句会が行われて参りました。特筆すべきは、その中に、"幼な老人"数名が生き生きとした表情で溶けこんでいることです。又、二十二年間続けてこられた九十二歳の倉下さんは「俳句はできなくなってしまったが、ここが好きだから・・・・」と句会には必ず参加しています。参加すれば香り高い句を詠んで、その座を心ゆくまで楽しんでいます。
 俳句は座の文学と言われます。句会は、美しい人間関係を育む座でもあります。
新しく生まれかわった俳句クラブの人達一人一人のもつ個性を尊重し、俳句クラブ三十年目に入った日々、共に精進をと願っています。

中村 喜子


 


 

 

初春
伊藤 半月
 
雪重き竹のトンネルくぐりぬけ

 
初春に生きる望みの便りあり

 
マラソンのゴール笑顔に風光る

  
走り来る一年生に風光る

  
昼寝する犬も驚く春一番

 
今日の日を語り伝える春の宵

 
窓開けて見渡す限り笑う山

 
過疎に住む母より届く新茶かな

 
杖つきて寺の散策梅雨晴間


紫陽花や雨の中にも凛と咲く

 

 


 

 

御施餓鬼
佐々木 久
 
御施餓鬼の念仏園に流れけり

 
治部坂のもろこし畑さやさやと

 
舗装路にいちょう落葉のしきつめて

  
立冬の山よりの風窓の音

  
寒行にまわるたいこの音響き

 
木に結ぶみくじ大吉初詣

 
雪祭り白鷺城の見事かな

 
春泥の猫の足跡留守の家

 
ひなまつり本を抱えた教師びな


春の宵思い出話に時忘る

 

 


 

 

恵那山
纐纈 きく

平成12年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
風鈴の音も工事でかき消され

 
幼き日友と見上げしいわし雲

 
赤とんぼ仲良く並んでどこへ行く

  
家の庭きれいに咲いたコスモスよ

  
門燈にむらがり来る秋の虫

 
庭を掃き枯葉を寄せるひと所

 
恵那山に雪が積もりて夕暮るる

 
友と行く熱田神宮初詣

 
書初めにおいでと言われ我行けず


春一番山谷多い信濃路よ

 

 


 

 

岩田 菊次郎

平成12年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
くれないの西空高く蝉が鳴く

 
ふれ太鼓偶田を渡る秋相撲

 
光の園どうだんつつじ初紅葉

  
立冬や華厳の滝の細くなる

  
小春日や農夫畑に麦を踏み

 
小春日のぬくみに子猫あくびする

 
夫婦滝二本並んだ氷柱かな

 
寒の入り仏法僧のすず遠し

 
ひな祭り古びな下段にそっと置く


ほら貝の響き渡るやお水取り

 

 


 

 

火吹竹
柴田 花江

平成12年度 県 視障協 俳句大会 秀作
 
さみだれや火吹竹もて肩たたく

 
いそがしい園の行事にきのこ採り

 
赤とんぼ竿の先からどこへ行く

  
秋晴れの一日ごとに深みゆく

第百三十三回 県 視障協 通信句会 今月の十句
  
寮母より大雪と聞き空仰ぐ

 
ふきのとう雪の下からいつ出たの

 
針供養おかげさまですありがとう

 
春の雪慣れぬ廊下を往き来して

 
春の山つつじの色を思い出す


味の良く新茶と聞いて手を合わす

 

 


 

 

日焼
市瀬 徳子

平成12年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
日焼けして気にせぬ齢となりにけり

 
冷やっこ家族の夕げ思い出す

 
朝顔が明日は咲くかと見てまわり

  
あたたかいおでんではずむ話声

 
色づきし枯葉がゆれる美しさ

 
懐手背中まるめて急ぎ足

 
今年また光の園で初詣

 
草餅をつくる楽しさ語り合う

 
おみやげを開けば新茶の香りかな


風薫る近道駆ける帰り道

 

 


 

 

夕涼み
野坂 亀三郎

平成12年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
早乙女があじあさい花で恋占う

 
コスモスの咲いて昔の友偲ぶ

 
赤とんぼつがいで遊ぶ昼さがり

  
虫の声昼と夜とで鳴きわける

 
昼さがり萩の一枝そっとさす

 
軒先の長き氷柱に西東

 
片すみに人目をしのぶ福寿草

 
切り餅はわらにしばられ春を待つ

 
薫風に乗せて流れる人の声


夕涼み浴衣の裾を風通る

 

 


 

 

夏の島
佐藤 みや子

平成12年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
畔に立ち青田見つめる農夫の顔

 
サミットや記念樹植える夏の島

 
コスモスのかすかに揺れる峠道

第百三十二回 県 視障協 通信句会 今月の十句
  

立冬や水音響く過疎の村

 
夕風に枯葉からまる竹ぼうき

 
窓ごしに時雨の音やもの想う

 
透明の氷柱見事に光る屋根

第百三十四回 県 視障協 通信句会 今月の十句
 

風光り元気にまわる洗濯機

 
山畑に人が出ている芋植えに


手の平にふんわりふれる藤の房

 

 


 

 

桐一葉
向山 オリ子

第百三十一回 県 視障協 通信句会 今月の十句
 
夕風に揺れるコスモス色あわし

 
鈴虫が宅急便で届く朝

 
庭下駄のそばに落ちくる桐一葉

第百三十二回 県 視障協 通信句会 今月の一句
  

つり橋を渡るむこうに冬立てり

 
枯葉散る中にきえゆくバイクかな

 
小春日の庭に手足を伸ばしけり

 
観音に参り帰りは雪が舞う

 
初詣古き石段杖を引く

 
獅子舞の村から村へ消えていく

第百三十四回 県 視障協 通信句会 今月の十句
 

建国日マラソンランナー過ぎてゆく

 

 


 

 

ほたるの光
千葉 敦子

平成十二年度 県 視障協 俳句大会 佳作
 
ほの青きほたるの光胸にあり

 
高々と咲くコスモスの色消えず

 
編みものを編む手はかどる夜長かな

 
指にふれかれんに咲けるお茶の花

 
一尺に近きつららの陽を放つ

 
亡き父の思い新たに懐手

 
裏庭へ梅咲く季節探りゆく

 
草餅のみどりをいまだまな底に

 
花御堂手にやわらかき花をみる

 
香りよく新茶句会の席高む

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春泥
倉下 英子

 
梅雨晴間膝いたわりつ杖をひく

 
暮れなずむ夏野に立ちて合掌す

 
晴れた日はコスモスの路杖をひく

 
こおろぎのつづれさせよと教えくるる

 
小春日や同じよわいの者同志

 
時雨るるや木の葉夕陽にいよよはゆ

 
焚き火してほうきの音もすがすがし

第百三十四回 県 視障協 通信句会 今月の十句

春泥に気遣いつつも白き足袋

 
許しませ障子を開けて初詣

 
山裾の山吹の花笑みそみぬ

 

 

秋の椅子
羽場  豊 

第二十五回 県 視障協 俳句大会 第三位
 

暁の身支度正し蝉を聞く

 
痛む足医師が押さえる秋の椅子

 
耳遠く誰か遠くで盆の歌

 
敬老日百まで生きよとはげまさる

 
木曾谷の早や暮れてゆく初紅葉

 
鐘が鳴る冬陽が沈む来興寺

 
時雨降り静かなひと日終わりけり

 
軒つらら遠く近くをながめつつ

 
寒の入りラッパの響き勇ましく

 
春の雪一夜静かに降り続く



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